第十章 八咫烏が導いたもの
後日。
チームケロの編集会議。
大きなモニターに、蒼井が編集した映像が映っている。
冒頭。
桜田通り。
東京タワー。
鳥居。
八咫烏。
恵比寿太田稲荷社。
鯛。
古い牛王神符。
サッカーボール。
そして、ピッチへ走り出す悠斗。
蒼井の仮ナレーションが入る。
『勝つことだけが、前へ進むことではない。』
画面が切り替わる。
試合終了後、仲間と笑う悠斗。
『誰かを導くこと。誰かと同じ方向を見ること。負けた場所へもう一度戻ること。』
最後。
飯倉熊野神社の八咫烏。
『帰る道を知る人は、たぶん、迷ったことのある人だ。』
映像が終わった。
しばらく誰も話さなかった。
最初に口を開いたのはケロだった。
オンライン画面の向こうから、
《いいですね》
と言った。
チーコが目を丸くする。
「それだけ?」
《大変いいです》
「珍しく褒めた」
《ただし十五秒短くしてください》
「やっぱり」
近藤君が笑う。
まゆみさんは記事構成を確認。
ヤヨイは字幕の表記をチェック。
佐久間は史実部分の注記を確認した。
「太田道灌の鯛奉納は伝承として表記してください」
「了解」
蒼井が答える。
「隆吉さんのボールの話も地域伝承」
「了解」
チーコは最後の静止画を選んでいた。
候補は三枚。
八咫烏。
悠斗。
そして、鳥居を出ていくチームケロの後ろ姿。
「これにする」
三枚目。
六人が歩いている。
チーコが少し前。
蒼井がその後ろ。
佐久間とヤヨイ。
近藤君とまゆみさん。
「ケロいないけどいいの?」
まゆみさんが聞く。
モニターから声。
《私は撮影者ということで》
「撮ってないでしょ」
チーコが言う。
《精神的に》
「便利だなあ、オーナー」
全員が笑った。

